五月雨や搭乗口へ消ゆる孫
煎りたてのコーヒー香る五月晴
若葉雨ホットコーヒーブラックで
歳重ねこころ痩せしと思う夏
孫ふたり鳥巣立つごと上京す
故郷を忘れないでよ巣立鳥
父想い母偲びつつ新茶汲む
青葉若葉この山川にいのち降り
行く春や生きてきしこと生きること
命日の墓に散り敷く桜かな
空港に孫ら見送り春惜しむ
野の梅や老いしは枝の触れ合うて
具沢山つくる味噌汁寒の朝
誰も皆生き辛き世の春の雷
夢でしか逢へぬ人あり冬の蝶
梅一輪咲きて遺影の夫に告ぐ
マフラーに頬まで埋めて帰る孫
一斉に飛び来る様や寒雀
寒月やバイトの帰路を守るごと
福寿草父の遺品の硯する
七回忌母の愛でたる寒椿
新年や心和みて句座にあり
青信号先に飛び出す落葉かな
残照の公園ベンチ落葉降る
風音にせかされている冬支度
手をかざしかまど炊きせし火の恋し
更けし夜のぬくもり恋し火の恋し
冬の夜老いのつぶやきツイッター
重なりて神秘な光赤い月
息かけて手鏡磨く秋思かな