曼珠沙華変わらぬ姿勢十年後
突然の別離の知らせ秋寂し
昨日とは何処かが違う秋の風
かまど飯湯気の香立ちし里の秋
八月ややり残したる事多し
訃報受く夜の静寂の虫時雨
夕顔や儚き恋の一夜花
蜩や黄昏時のまわり道
朝顔や一人の朝のひとりごと
踏まれても踏まれてもまた草の花
風爽やか墓前で交はすありがたう
逢へさうで逢へない夢や墓参り
黙祷の八月六日蝉時雨
夾竹桃あの日と同じ赤き色
入魂の一球一打玉の汗
夫着し浴衣リメークスカートへ
幸せはかみしめるもの夏の月
代田掻く三連水車音弾む
枇杷剥けば果実溢るる幼き日
月見草胸打つ語録残し逝く
額の花庭を彩るすがしさよ
今日というひと日始まる沙羅の花
…老鴬や夫と交わしたほーほけきょ
凜とせし南天の花主人公
茶摘女の動く指先手際良く
五月雨や薄墨で書くのし袋
空豆や今日の布団は陽の匂い